授業料免除対象者
○○大学では,大学院及び別科の学生を対象に本人の申請に基づき本学の免除関係規則により家計基準,学力基準を審査,選考のうえ,予算の範囲内で,各学期ごとに授業料の全額,半額または一部を免除する制度があります…
申請資格
(1)経済的理由により授業料の納入が困難であり,かつ,学業優秀と認められる者
(2)各学期納期前6か月以内(新入学生は,入学年度の最初の学期に限り入学前1年以内)に以下のいずれかの事由が発生し,授業料の納入が困難になった者
① 学資負担者が死亡,本人又は学資負担者が風水害等の災害を受けた場合
② ①に準ずる場合であって,学長が相当と認める事由がある場合
各大学大学院にはこうした授業料免除制度を設けています。
一見すると、授業料の全額や半額といった学生に嬉しい制度であるように見えます。
しかし、実際のところこれらの制度を利用できる者は限られた学生であり(成績優秀者と言う意味ではない)、誰もが受けることができる制度ではない、ということを後々になって知る事になるでしょう。
大学はこうした授業料免除制度以外にもさまざまな支援制度による給付型奨学金を設置しています。
それらの給付制度のほとんどは、極めて稀なケースのみを対象としており、大学生が期待きでるような給付制度ではないというのが現状です。
ただし、一部例外はあります。
もし、大学院要項にあるようなこうした制度を利用したいと考えている方は、あなたの進学しようとしている大学院がその例外に当たるか否かを是非確かめてみてください。
大学院進学者に伝えたい【大学院授業料免除】はあてにするな!
なぜ大学院授業料免除制度はあてにしないほうが良いのでしょうか。
冒頭でも綴っておりますが、その答えは「都合よく申請者を排除することができる決まり文句が審査基準にある」ためです。
まず、先ほどの申請資格について再度チェックしてみましょう。
申請資格
(1)経済的理由により授業料の納入が困難であり,かつ,学業優秀と認められる者
(2)各学期納期前6か月以内(新入学生は,入学年度の最初の学期に限り入学前1年以内)に以下のいずれかの事由が発生し,授業料の納入が困難になった者
① 学資負担者が死亡,本人又は学資負担者が風水害等の災害を受けた場合
② ①に準ずる場合であって,学長が相当と認める事由がある場合
おそらく学生えあれば「学業優秀と認められるもの」というポイントを意識してチェックすると思います。
しかし、実際のところ成績うんぬんはまったく関係なく「両親の経済状況」がほぼ審査基準のすべてとなります。
つまり、学生本人は蚊帳の外というわけです。
- 「経済的的理由」:申請者本人ではなくその両親の問題。
- 「学費負担者」:申請者本人ではなくその両親のこと。
これらのことは、はっきりと明記されていません。
しかし、「学資負担者が死亡」という文言が示す通り、学費は学生ではなくその保護者が支払う事が前提となっていることを暗に意味しています。
つまり、学生本人の問題はまったく関係なく、その両親が貧困状態にあるか、家計主が死亡、もしくは自然災害による被害を受けているからいずれかに該当しない限り、授業料免除は受けることはできないのです。
「授業料は保護者が支払うもの」という大学側の考え
私は学部卒業後に就職し、その後大学院へ進学したため、大学院からは親の援助を受けずに奨学金とバイトを掛け持ちして自力で学費と生活費を工面していました。
ご存知の通り、大学院入学時には入学金と半期分の授業料の支払いなどで100万近くの支払いが必要となります。
それを自ら用意すると、もはや経済的困難な状況になると言わざるを得ません。
つまり「授業料はあなたの保護者が払うものです」と言われたもの同然です。
これに関して私はすごく違和感を感じており、ここに大学教育の本質的な問題があると考えています。
大学は大人が利用する研究機関
それを象徴しているのが各大学が設置する意味を成さない「授業料免除制度」です。
こんな制度はただの客寄せのパンダにすぎません。
実用的でないうえに現実的でもない給付奨学金制度ばかり作ったって学生はなんの得もせず、ただただその表向きの調子の良い言葉に踊らされるだけでしょう。
こうした学生を騙すと捉えられてもおかしくない制度は即廃止、もしくは審査事実を明記すべきです。
【朗報】例外あり:同志社大学、京都産業大学を例にします
同志社大学大学院
こちらは同志社大学大学院奨学金の内容を示しており、奨学金給付額は授業料の1/2相当、つまり授業料が半額になるという免除制度です。
こちらの出願資格が以下になります。
さらに選考基準の(1)家計について、では「学生本人の前年度の収入で審査します。」としっかり明記されており、学生自身が審査対象であることがしっかりと明記されていますね。
まさにこれが本来あるべき授業料免除制度、給付型奨学金制度です!!
では、続いて京都産業大学を見てみましょう。
京都産業大学

こちらは京都産業大学大学院が設置する授業料免除制度です。
なんと、驚くことに大学院博士課程進学者は無条件に全員授業料90%免除という制度が設けられています。
大学院修士課程においても、一律10%、さらに入学時の成績(入試成績)に応じて40%~50%が加えられ、計60%、50%の授業料免除となる大胆な制度が設けられています。

京都産業大学の場合、自ら申請するのではなく、博士課程は進学者全員が対象、修士課程では大学院入学時の成績優秀者が対象となっているため、まさに学生自身を審査対象にした授業料免除制度、給付型奨学金制度ですね。
ちなみに京都産業大学は鳥インフルエンザに関する世界最先端の研究拠点となっており、2008年にはノーベル物理学賞を受賞した益川敏英敏英教授が教鞭を振るっていた大学でもあります。
今回は2大学をピックアップしていますが、こうした学生個人を評価対象とする考えを持った大学が今後も増えていく事を期待します。
あなたが進学する大学院授業料免除制度がどのような審査基準になっているのか、この際是非チェックしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
- 大学が設置している授業料免除制度の多くは、実用的でない現実的でもない制度となっている可能性が高いため、その審査基準をチェックしてみるべき。
- 学生自身ではなく、その保護者を審査基準にしているのであれば、それは見せかけだけの給付型奨学金制度であり、客寄せパンダ的役割となっているにすぎない。
- しかし、近年では学生自身の成績にのみフォーカスした審査基準をとる給付型奨学金を設置する大学も増えてきている。
- その例として同志社大学大学院と京都産業大学大学院をピックアップした。
昨今問いただされている日本学生支援機構の奨学金制度について、その制度の見直しを進める一方で国が設置する給付型奨学金制度にも注目が集まっています。
また、これを期に様々な大学が独自に新たな奨学金制度を設置してくることが予想されます。
そうすると、多くの名前の給付型奨学金が乱立し、その違いや審査基準を混合しかねない状況に陥る事になるかもしれません。
しかし、そうした状況になってもそれらの真意を自ら考え、本質を見抜く力を備えておくよう心掛けておきましょう。
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