山本太郎氏が代表を務めるれいわ新選組が掲げる政策の一つ「奨学金徳政令」。
この記事に辿り着いたあなたはきっとご存知かと思います。
あなたは「奨学金徳政令」についてどのような意見をお持ちでしょうか?
その前に、以下の事実を知っていただきたく存じます。
奨学金制度を運営する日本学生支援機構JASSOは奨学金の利息および延滞金により年間約364億円もの収入を得ている。
日本学生支援機構、「学生」を「支援」するはずの奨学金という制度により、JASSOは年間346億円もの収入を得ている一方で、その裏では自己破産を余儀なくされる若者が続出しているということを。
そしてこうした実態を日本は見て見ぬふりをしているということを。
さらに、奨学金制度はそもそも少子化対策の一環として政府がJASSOに大金を投じて始まった制度であり、それが現在、少子化問題を引き起こす要因になってしまったということを…。
目次
【奨学金制度の実態】奨学金徳政令は少子化対策の失敗を正すための免罪符

世界的に見て大学学費の無償化、政府による給付型奨学金の供給が進む流れにあるにも関わらず、日本はそれに逆行している異様な状況にあります。
日本は先進国の中でも教育への投資(教育に充てる予算の割合)は極めて最低なレベルにあると言えるでしょう。
その結果、各家計への負担が増し、学生は奨学金とは名ばかりの学生ローンに頼らざるを得ない状況になり、卒業と同時に数百万円の借金を背負う事を余儀なくされています。
山本太郎氏が代表を務めるれいわ新選組の掲げる奨学金徳政令。
奨学金徳政令は、教育への投資を怠ってきた日本に対する免罪符となるでしょう。
しかし、奨学金徳政令に関して否定的な意見も多くあります。
- 借りたもんは返すのが当たり前。
- 奨学金で遊びほうけた学生がいるもの事実。それをチャラにするのはおかしい。
- 私は頑張って奨学金を返済したのに、まだ返済できていない人だけチャラにするなんて不公平にもほどがある!!
- 私は奨学金を借りなかったけど、返さなくていいなら借りておけばよかった。
意見は様々ですが、結局のところ共通して言えるのが「不公平だ」という意見です。
つまり、個人の損得勘定による否定的な意見です。
でも気持ちはわかるんですよね。
人間なので自分以外の人が得をしている状況に納得できないのは理解できます。
しかし奨学金徳政令の狙いは日本の救済なのです。
現在最も緊迫した日本が抱える問題に少子化問題があります。
そして、少子化が進む要因の一つに若者の貧困問題があり、その要因の一つに奨学金という学生ローンが影響していることは明らかな事実です。
そして、信じがたいことに、その若者の貧困の要因となる学生ローンの実態は、日本が教育への投資をおろそかにした結果生まれた悪しき金融事業と言わざるを得ません。
なぜ若者は進学のために奨学金に頼らざるを得ないのか
本来高等教育を受けることで、将来の日本をけん引するであろう優秀な人材を育成する事が期待される大学院制度。
しかし現状は、その過程で必要となる学費を奨学金とは名ばかりの学生ローンにより工面せざるを得ず、卒業と同時に重くのしかかる借金のリスクをとることが出来ずに、専門職、研究職の道を諦めざるを得ないケースは珍しいことではありません。
大学、そして大学院にかかる費用を奨学金により工面しようとすると、卒業と同時に数100万円、進学分野によっては1,000万円にものぼる借金を抱えるリスクを容易に受け入れることは難しいでしょう。
つまり、本来は日本の将来を担うはずの若い人材を育むべき高等教育の現場がその機能をは果たしていないのです。
なぜこのようなことになってしまっているのでしょうか。
高騰する大学の授業料・入学金、その発端は1980年代に始まったとされる自由主義にもとづく大学改革にあります。
この大学改革により国立大学は「受益者負担主義」の基、国立大学の入学金と授業料を引き上げる方針を掲げたのです。
この「受益者負担主義」とはいったい何なのでしょうか。
市場経済において、市場の失敗が生じない限り、利益を受けるもの(受益者)が市場で決まる価格を支払い(負担し)、その経費及び生産者への利益へ回す仕組み(Wikipediaより)。
つまり「教育を受ける本人はそれにより得られる利益があるため、それに要する経費(つまり学費)は自己負担すべき」と解釈することができます。
しかし、本当にそうなのでしょうか。
教育現場を市場経済と同様に捉えた考え方を前提としていますが、果たしてこれは妥当なものなのでしょうか。
もしろん、教育を受ける本人は将来的に得られるであろう利益があるため受益者となります。
しかし、教育がもたらす利益は本人のみに留まらず、企業や社会全体の利益となり、結果として日本が受益者となり得ると考えられます。
つまり、教育において「受益者負担主義」を貫くのであれば、教育に必要となる経費(学費)は国が負担すべきと考えてもおかしくはありません(むしろ妥当な考えです)。
これが、未来の日本に対する先行投資となるのです。
それにも関わらず、日本では大学進学・卒業のためには奨学金という名ばかりの学生ローンを頼らざる得ない現状であり、学生の家計負担が増大しています。
そのため、現在では大学生の2人に1人が奨学金を受給している状況になっています(奨学金受給率48.9%@201年,引用元:日本学生支援機構「学生生活調査」)。
世界水準で見た日本の異常とも言える教育ローン
日本の大学にいると奨学金を借入することが一般的かのように考えられがちですが、これは世界的に見て異常ともいえる状況であることを知ってほしいと思います。
以下のデータをご覧ください。
このデータは経済協力開発機構(OECD)に加盟する国々での給付型奨学金と教育ローンの比率を表すデータです。
特に、ヨーロッパ諸国では大学教育費の無償化が進んでおり給付型奨学金が一般的であるにもかかわらず、日本では学生の借金により学費をまかなっている現状が示されています。
しかもその借金となる奨学金の70%以上が有利子の貸与型奨学金となっていることはもはや異常事態と考えるべきでしょう。
この結果、学生は大学卒業と同時に数100万円の借金を背負うことになるのです。
金融事業化した奨学金制度:若者の貧困
2018年には、3か月以上の滞納件数は36万件を超えており、この割合は総貸与件数の0.78%にあたります(引用元:返還金の回収状況及び平成28年度業務実績の評価について)。
つまり、大学を卒業した30万人以上もの若者が貧困生活を余儀なくされているのです。
また、平成28年度に奨学金の返済苦により自己破産に至った件数は2,009件にのぼり、これは返還者総数(約410万人)の0.05%に当たる数値となります(引用元:奨学金返還者の自己破産に関する報道について)。
本来は日本の将来を担う若者の育成のための奨学金が、なぜ若者の自己破産を招くことになっているのでしょうか。
まずはじめに、奨学金制度を運営する日本学生支援機構JASSOは奨学金の利息および延滞金により年間約364億円もの収入を得ていることを報告します(以下の青ライン)。
このJASSOの実態を見た上で、奨学金制度が「学生」を「支援」するための制度と言うことが正しいかを考えていただきたいのです。
もはや奨学金は都合の良い金融商品としてJASSOにより金融事業化していると言わざるを得ない状況になっています。
奨学金延滞者に対するJASSOの強硬な回収
2018年には奨学金返済の3か月以上の滞納件数は36万件超にのぼると報告しました。
では、3か月以上滞納した場合どうなるのでしょうか。
1. 滞納3ヵ月:個人情報を個人信用情報機関(ブラックリスト)に登録
- 仮に延滞を解消できても以降5年間はブラックリストに登録されたままになるため、ローンやクレジットカードの審査が通りにくくなります。
2. 滞納4ヵ月:JASSOの委託業者(債権回収専門会社)による取立が始まる
3. 滞納9ヵ月:裁判所へ支払い催促の申し立てを実行
- 2週間以内に裁判を起こさないかぎり、財産差し押さえの法的措置が取られます。
このような強硬な回収により、自己破産に陥る若者が急増しています。
さらに、奨学金の返済が滞れば年率5%の延滞金が加算されます。
ただし、奨学生は経済的事情により通算10年間の返済猶予を申請する事ができます。
その期間中は延滞金が発生しません。
しかし、10年を過ぎればいかなる理由で会っても猶予は認められず、強硬な回収が再び始まります。
さらに最近では、一旦返済が滞ると将来返済予定の金額を「一括請求」するを事例も報告されており、こうしたJASSOの強硬な回収手段が問題視されています。
【朗報!?】NY州では公立大学無償化を発表
学生ローンの問題は日本同様にアメリカでも問題視されています。
しかし、日本よりも問題意識は強く、大統領選に立候補したサンダースが「公立大学授業料の無償化」を掲げて世論を巻き込み、既存の学生ローンを免除する政策を発表しました。
さらに、ニューヨーク州では全米に先駆けて公立大学の授業料無償化を発表しており、学生ローンによる若者の貧困問題を国家予算を当てて解消する動きが見られています。
こうした米国の流れはきっと日本にも影響することになると期待されます。
そこで注目すべきが山本太郎氏が代表を務めるれいわ先進組が掲げる「奨学金徳政令」です。
まとめ:奨学金徳政令は少子化対策への免罪符
日本人の中には「奨学金徳政令」を馬鹿げた政策であり、若者の票集めにすぎないという意見を持つ人もいるでしょう。
しかし、個人の借金問題という局所的な見方ではなく、日本社会全体を見通す大局的な見方をすれば、その必要性と日本がこれまでおろそかにしてきた教育へのツケが浮き彫りになってきます。
そして、それが少子化問題という最も深刻な社会問題へ繋がっているのです。
- 大学無償化と給付型奨学金の普及の世界的な流れに逆行する日本の高等教育制度。
- 学生をむしばむ奨学金という名ばかりの金融商品。
- 若者の貧困により進む未婚率の増加、そして少子化問題。
これらはすべて日本のが教育に対する先行投資を怠ったがためにおきた問題です。
今まさに「奨学金徳政令」という免罪符が日本には必要になっているのです。