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【元ポスドクの考察】令和3年『博士課程学生支援』は本質的な問題を無視しているのでは!?

【悲報】令和3年『博士課程学生支援』はまったく本質を無視したお飾り政策だ!?
  • 令和3年から始まる『博士課程学生支援』の3つの支援事業。
  • 【前例あり】博士学生の経済苦を政治利用している疑い。
  • 学振に採用されない博士は研究者としての素質がない。
博士課程に在籍する学生にとっては朗報かな?でもちょっと待って。現在、博士課程の学生は全国に7万人以上いると言われていますが、そのうち10分の1しか対象にならないってことは…。もらえない学生がちょっとかわいそう…。

ちなみに、博士学生には学振(DC1,2)という奨励金制度がありますが、今回の『博士課程学生支援』はまったく別の経済支援制度になります。

学振に採用されると、年間240万円+研究費(150万円)が支給されるため、生活費や学費の心配をすることなく、研究活動に専念できます。

とはいっても、学振に採用されるのは一部の博士学生のため、学振に採用されなかった博士は奨学金を借りて学費・生活費を工面したり、バイトしたりする人も珍しくありません。

指導教員に溺愛されていない限り、経済的な負担が大きく、研究どころではない!っという状況に陥る博士もいるかもしれません…。

博士の貧困は日本経済の問題では?

日本の将来を担う優秀な人材?というわりには、待遇が悪すぎるのではないでしょうか…。経済的な理由で博士への進学を諦めたり、進学しても、経済的な不安と進路を不安視して辞めていく人もいるって、とってももったいない。

博士への進学基準をちょっと厳しくしたりして、すべての博士学生へ学振のような支援を行うべきだと思うのは、私だけでしょうか。

もしくは、博士学生を“職業”として扱うべき。

ただし、こうした問題(博士学生のリアル)は、実際に博士を経験した人でないとなかなか理解することは難しい問題です。

そんな背景があるからこそ、今回の『博士課程学生支援』が決まったと思われますが、その内容を見る限り、本質的な問題を完全に無視した政策にしか思えません。

言葉を選ばすに言えば、“博士学生の経済苦が政治利用されているだけでは!?”っと疑ってしまいます。

 

まぁ、もらえる学生にとっては嬉しい限りですが、博士の研究環境、さらには日本の将来を考えた時に、根本的な問題にメスを入れなければ、何をしたい政策なのかが理解できません。。

是非、一緒に考えてみましょう。



令和3年から始まる『博士課程学生支援』の3つの支援事業

 

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今回の『博士課程学生支援』について、誤解されているポイントを明確にしておきます。

『博士課程学生支援』事業では、博士学生を国が支援するものではなく、博士学生を支援しようとする“大学を国が支援”するという事業です。

つまり、既存の学術振興会の特別研究員制度(DC)とは”本質的に異なる”ものです。

所属する大学院によって支援枠がある!?

本来、優秀な博士が多くいるはずの東大や京大は、博士の在籍数が多いため、本制度の経済支援を受ける競争率は高くなることが予想されます。

その一方で、博士の在籍数が少ない大学院では競争率が低く、今回の経済支援を受けやすい可能性があります。

大学名で博士学生のレベルを差別化するわけではありませんが、優秀かつ将来性のある博士学生に対して支援は行われるべき、と思うのは私だけでしょうか。

ちなみに、学振DC制度は学術振興会が博士学生を研究実績を基に審査し経済支援するものです。

①大学フェローシップ創設事業

修士課程から博士課程への進学者1,000人に対して、生活費と研究費を支援する新事業。

  • 対象者:1,000人
  • 生活費支給額:180万円、研究費:50万円
  • 開始時期:令和3年4月~

本事業は、国が博士学生を支援するものではなく、博士学生を支援する大学に対して国が補助金を出す仕組みになっています(国からの補助率は80%)。

そのため、対象となる学生の審査・選考は各大学に委ねられると思われます。

②創発的研究支援事業の博士支援強化

そもそも、創発的研究とは…。

破壊的イノベーションにつながるシーズを創出する潜在性をもった科学技術(人文科学のみに係るものを除く)に関する研究分野を対象に、失敗を恐れず長期的に取組む必要のある挑戦的・独創的な研究。(引用元:科学技術支援機構)

リサーチアシスタント(RA)に採用する形で支援を行う。

RAとは、博士学生の所属機関の教育・研究のための助手業務に就くことで、大学が博士学生に対して給与を支給する経済支援。

ただし、当博士学生が所属する研究機関(研究室)が科研費などの研究費を得ていなければ、RAを採用することができないため、大学からの経済支援制度というよりは、所属する研究室の規模によってRAによる経済支援を受けられるかどうかが決まってくる。

  • 採用人数:800人分
  • 生活費支給額:240万円
  • 開始時期:令和3年4月~

今回の創発的研究支援事業の博士支援強化では、RAに当てることができる研究予算を各大学に補助するものと考えられます。

③博士支援強化事業

プロジェクトリーダー(PI)になるような博士に対して支給する。

  • 採用人数:6,000人分
  • 生活費支給額:240万円、研究費:50万円
  • 令和3年の秋頃~

これはちょっとよくわかりません。。

学生がPIになるかどうかは、その博士学生を指導してきた教授などの指名による“形式上のもの”にすぎないと思っていますが…。
※私のPIに対する認識が違うかも?



 

以上、3つの制度が『博士課程学生支援』の内容です。

これまでにない大規模な経済支援とはいえ、『博士の10分の1の生活を支えよう』という経済支援が、結局のところ何がしたいのかが理解できません。

やるなら10/10を支えてやれよ…。

ややこしい制度を3つも作るより、学振DCの採用枠を増やせばいいだけ。

それなのに、なぜややこしい制度をわざわざ3つの作ってるの!?って疑問に思うのは、私だけでしょうか。

学振の採用枠を増やせば良いだけでは?

採用条件が違うだけで、経済支援内容は既存の学振と一緒じゃん?

それなら、学振の採用枠を増やせばいいだけなのに、なぜ政治家はわざわざ自分たちの仕事を増やすようなことをしているんだ?

そこに費やすコストを博士への支援に回せば、同じ予算内でより多くの博士を対象にした支援ができるはずよね?

これって、本当に博士学生のための政策なのか…と疑ってしまいます。

同じようなことが2020年10月にもありましたね…。

 

『博士課程学生支援』は博士の経済苦を政治利用しているのでは!?

今回の『博士課程学生支援』には別の意図があるのではないか(博士学生の経済苦を政治利用しているだけではないのか)と疑ってしまいます。

というもの、結局のところ、本質的な問題は何も解決されないし、過去にも同じようなことがありました。

昨年、2020年10月のこと。

引用元:https://www.komei.or.jp/komeinews/p123337/

この応援金という“名ばかり経済政策”の内容には驚きました。。

“大学受験生に一律2万円の応援金を給付する”という内容でしたが、そのために計上した予算額が、明らかにおかしいかった…。

【応援金の趣旨】
 
大学受験生に大学入学共通テスト検定料1万8千円相当額を給付。

【給付対象者】

  • 2021年3月に高校卒業し就職or進学する高校生:115万人。
  • 高校卒業後2浪までの浪人生:約11万人。

➪ 約125万人

給付対象者約125万人に2万円を給付するなら、約252億円の予算が必要になります。

これは小学生でもわかる計算ですよね。

しかし、、

公明党が計上した予算は約380億円!

どういう計算したらこうなるんだ…

給付額以外の128億円はどこにいく!?

もし受験生の経済負担を軽減するための給付金なら、センター試験料を国が一括で負担すればいいだけじゃないの?

振込手数料で128億円もかかるわけないよね。128億円は人件費や外部委託費に必要と主張したいのか…。

受験生の応援金であれば、必要な予算は252億円のはずなのに、128億円はどういう経費として計上されているのか、謎です。

この問題についてはABEMAプライムでも取り上げていましたね。

 

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これって、表向きは大学受験を目指す高校生&浪人生への経済支援としているだけで、実際はその裏で利益を取る政治家がいるってことですよね。

『博士課程学生支援』も同じでは!?

過去にも同じような政策が上がっていたことを考えると、今回の『博士課程学生支援』は、博士への経済支援と表向きに公言しているだけで、博士学生の経済苦を政治利用しているだけなのでは!?っと疑ってしまうのは考えすぎ?

本当に博士学生のことを考えるなら、博士課程の学費無償化とか、PDの受け入れ枠を作るとか、他に有効な対策があると思うんだけどな。

支給対象になった10分の1の博士には申し訳ありませんが、マジで意味がない…。

博士を救う!っという建前で予算を計上し、ややこしい制度をゴチャゴチャ作る新規事業の裏で利益を得る人達がいるのかも。

何がムカつくかって、博士の経済苦を政治利用していること。

救うなら、10分の1でなく、100%救ってほしいし、もっと本質的な問題にメスを入れるべきだと思います。

学振に採用されない博士は研究者としての素質がない

最後に。

ちょっとTwitterで炎上した経緯があるため、『学振に採用されない博士は研究者としての素質がない』という内容に対して、元ポスドクの立場から意見を綴ります。

 

ちなみに、私は学振に落ちました…

https://rikejoblog.com/education/graduate-school/academic-graduate-student-self-assessment/

 

意見は様々ですが、研究者としての素質を図る指標の1つに学振があると考えています。

研究者は研究するだけが仕事ではありません。

研究者の人件費、研究費は学振(DC1,2 PD)、科研費、その他から引っ張ってくる必要があり、そのためには、申請書の作成スキルや、時には政治力が必要になることもあります。

こうした“スポンサー”を見つけることができるか否かが、プロとアマの違いでもあり、スポンサーなくして研究は続けることなどできません。

学振取れなくても研究者になれる!

研究者の素質がなくても研究者になることはできますが、そのためには誰かに担いでもらう必要があります。

私は学振に採用されませんでしたが、指導教員の紹介があり、学位取得後にPDのオファーを2つの研究プロジェクトから頂きました。しかし、指導教員のコネがなければ、間違いなくニートでした。

研究者であれば、研究費を調達してくる仕事は必須です。

それができるか否かは、博士時代に学振DC1,2を取れるかというポイントにおいて、研究者としての素質が問われます。

でも、学振取れなくても研究者になって、その後に科研費取れてる人もいるし、結局は学振取れるかどうかって関係ないんじゃない?

もちろん、学振を取ればければ研究者になれないというわけではありませんし、その後に学振PDや科研費を取ることができないというわけでもありません。

しかし、それは、そこに至る過程において研究者としてのポストを“与えられた”からこその話であり、恵まれた環境にいたからこそ、研究を続けることができたのだと思います。

遅咲きっていうのかな?

遅咲きするには、それまでの長い期間に水を与え続けた人たちがいるはずです。

そうした環境がない博士がいるのも事実であり、環境に恵まれなければ自らスポンサーを見つけなくては学位取得後にポストを得ることができません。

つまり、博士の頃に学振を取れるか否かは“研究者”として研究を続けていくための”素質”を図る1つの指標になります。

 

元ポスドクから重要なアドバイス

大学院で学振DCに採用されなければ、学位を取得できたとしても、指導教員のコネなしに研究職のポストを得ることは難しいかもしれません。

人生は選択の連続です。“就職”という選択も考えておくべきです。

 

というか、研究者になれるか(ポストを得られるか)って“運”の要素も大きいですよね。

私の場合、学位を取得した次年度が大型の研究プロジェクトがスタートするタイミングと重なっていたために、PDのポストを“運良く”もらうことができました。

もし、そのプロジェクトがなければ(指導教員たちの科研費が採用されていなければ)、研究職に就くことはできませんでしたので。

その他にも、“学振取れない場合は博士課程の学費と生活費はどうすの?”っていう現実的な問題もあります。。

実家が裕福でない限り、学振を取れずに博士課程で研究を続けるのは、ぶっちゃけリスクが高い選択です。。
※本来は、政治がテコ入れすべき問題とも思いますが…。

そのため、“研究を続けられる環境を自分で作ることができるか”という点については、間違いなく研究者の素質が関係しますよね。

研究者の仕事は研究するだけではありません。

自ら研究を続けられる環境を作る必要があり、その第一歩が学振です。

だからこそ、学振に採用されるか否かは、研究者としての素質の有無とは切り離せない問題だと考えています。


※私もポスドクの時に読んでいれば…

 

あわせて読みたい!

https://rikejoblog.com/education/graduate-school/reasons-quitting-pd/

 

以上です。

匿名での誹謗中傷はご遠慮ください。