なんとも信じがたいニュースが世間で議論を呼んでいます。
京都総評が2019年12月5日にHPで京都市における「最低生計費試算調査結果―30代~50代の子育て世帯についての調査」を公表しました。
京都市で4人世帯のごく普通な生活を送るためには月48万円も必要との調査結果が世間を驚かせています。
「適当な調査結果で国民の不安を煽ってどうするんだよ」
「そんなに必要ならほとんどの世帯が崩壊しているはずだ」
このニュースを見た時の私の第一印象はこんな感じでした。
しかし、実際に調査結果の資料をダウンロードして中身をチェックしてみると、意外にもかなり詳細な調査が実施されており、なかなか文句の付けがたい調査内容であったことに驚き、本記事を書こうと思い至りました。
この調査結果は、京都市を対象に調査した結果であるだけで、他県や市町村についても当てはまる内容であると思われるため、是非目を通しておくべきだと思います。
さらに、京都市だけでなく、各都道府県においても同様の調査を実施してもらいたいです。
目次
京都市【普通の生活に48万円必要】給料だけじゃ生活できない日本の実情が浮き彫りに
結論から言うと、これはバカげた話でもなんでもなくリアルな調査結果であることは間違いありません。
調査結果を一通り読んだ印象としては、確かに月48万円くらいは必要になる事がわかります。
京都総評の調査報告書の総括のみを抜粋すると以下の様な集計結果となります。

世代別の調査結果をまとめておりますが、同世代の30代夫婦世帯について詳しくチェックしていこうと思います。
この総括のとおり、30代夫婦世帯に必要な月々の費用は486,913円、年間で5,842,956円という結果になります。
さらに注記すべきポイントはこの調査結果に貯蓄や資産運用に充てる支出が入っていません。
つまり、年間の世帯収入が5,842,956円でようやく「ごく普通の生活」が送れるようになるが、貯金はゼロという事です。
早速、気になる内訳をチェックしてみましょう。
A.消費支出(1-10)
1.食費:112,881円
この金額の算出方法は、成人男性と女性、お子さんの年齢を考慮した際に必要となるカロリー計算をし、その食事を用意するために必要となる食材を現在の物価を元に算出した結果になります。
算出方法が実生活とは異なる科学的根拠を元にしているところがやや気になるところです。
わたしの経験上から言えば、食事メインのカフェを経営していた頃の月々の材料費が20~30万円だった事と比較していえば、10万を超える食費は非常に高いと言わざるを得ません。
月々112,881円と言うことは、一日あたり3,700円くらいの食費になります。
ちなみにこの金額には外食費が含まれていません。
まったく料理が苦手という世帯であればこれくらいの食費がかかる可能性はないとは言い切れませんが、同世帯であれば月々5万円前後で抑えることはまったく可能ではないでしょうか。
2.住居費:63,542円
この住宅費はむしろ安い方ではないでしょうか。
京都市内の女子大学生の家賃(オートロックマンション)と大差ない金額です。
例えば、3,000万円の新築戸建てを35年ローン(金利1.3%)で購入した場合の毎月の返済額は8.9万円になります。
また、これに賃貸の場合はこの金額に駐車場代がプラスされるため、やはり低く集計し過ぎている印象は否めません。
3.光熱・水道:18,636円
この金額もやや低く算出されているように思いますが、年間を通した平均値でみると妥当な金額なのでしょうか。
私は一人暮らししていた頃に、冬場は電気代で1万円をいく月もありましたので…。
4.家具・家事用品:11,520円
こうした項目を見ると、この調査が非常に細部にまで目を配っている事がわかります。
一般家庭にあるようなテレビや冷蔵庫、洗濯機などの家電製品の一般的な購入価格と耐久年数を元に月々の費用を算出しています。
これは妥当な金額と言えるでしょう。
5.被服・履物:13,095円
いわゆる衣類費ですね。
私は未婚の独り身のため、お子さんにかかる衣類代の検討がつきません…。
しかし、小さいお子さんであれば、成長も早いしよく汚すだろうし、旦那様のスーツ代なども考慮すれば、実際にはもう少し高くなるのでは?と思いますが、節約気味に使えば家族4人でこのくらいが妥当な金額となるのでしょうか。
6.保険医療:8,440円
これは国民健康保険のことではなく、病院での窓口支払いや市販の医薬品等の購入による実費負担の医療費のことです。
7.交通・通信:53,185円
この項目の通信という言葉がいまいち理解できませんが、要するに自動車の維持費、自転車の購入費、その他の交通費の合計金額となります。
このうち、自動車関係の費用が30代世帯だと月々36,555円と算出されています。
しかし、この36,555円の中にはガソリン代10,000円と駐車場代5000円が含まれていますが、京都市内で5,000円の駐車場はまず見つけられないでしょう。
少なくとも10,000円を見積もるべきだと思います。
また、中古の型落ちの車を購入していない限りは、自動車関係の維持費が月々3万円代に収まる事はないのではないでしょうか。
私の経験から言えることは、2年に一度の車検が20万円、ガソリン代月10000円、自動車購入のためのカーローンの毎月返済額2万円、駐車場代10,000円、その他の自動車保険、自賠責保険、自動車税などを考慮すれば自動車の維持費は月々5万円以上になると思われます。
つまり、この項目においても実生活より、低く算出されているという印象を感じます。
8.教育:28,097円
内訳によると、私立幼稚園の月額費用が25,139円、公立小学校の月額費用が2,958円となっていました。
仮にその他の習い事をした場合は、さらに教育費が増すことになります。
今の時代、そうした習い事は贅沢の一種と捉えられるのでしょうか。
9.教養娯楽費:26,192円
月一回の日帰り旅行(費用5,000円)、一泊以上の旅行が年2回(費用:50,000×2回)、その他の交際費、さらにはNHK受信料1,60円、インターネット回線費3,579円を考慮した上での算出結果になります。
これは低すぎではないでしょうか。
月に一回家族のお出かけで費用5000円って、小さなお子さんいるのに月1回しかお出かけしないのか!ってつっこみたくなりますね。
さらに、3,000円代のインターネット回線って、むしろどこの会社か教えてほしいくらいです。
10.その他:45,487円
この項目には、生活に必要な日用品(石鹸やシャンプーなど)であったり、散髪・美容室代(男性:2ヵ月に1回の利用で1回2,000円、女性:3ヵ月に1回の利用で1回12,000円)、身の回り品や、冠婚葬祭に掛かる費用(お祝儀代など)、町内会費、などが含まれています。
月額費用としてはやや高い印象を受けますね。
それでも、細かな内訳をみると、男性の散髪代が2,000円設定となっているなど、ちょっと破格の金額設定に失笑してしまいそうなところもあります。
しかし、たまに小さな無駄遣いなども含め、ちりも積もれば山となると考えればあながち的外れな金額ではないとも言えるでしょう。
B.非消費支出:67,738円
これは、生活をする上での必要な消費ではなく、税金等で差し引かれる費用になります。
ちなみに、この日消費支出の算出では、年収410万円(月額給与28万円、ボーナス74万円)の夫を持つ世帯をモデルケースとして取り上げています。
ざっくり税金として差し引かれる支出は年間で以下の通りです。
- 社会保険料:592,860円
(内訳) 年金:375,150円、健康保険料:205,410円、雇用保険:12,300円 - 所得税・住民税:220,006円
(内訳) 所得税:70,806円、住民税:149,200円
C.予備費:38,100円
これは、Aの消費出費の1割を計上した金額であり、身長や体重などの個人差、さらには心身の健康状態を考慮した消費支出をとなっているようです。
要するに、プラスα的な要素ですね。
個人的には、今回の調査結果においては考慮しなくてもいいと思っています。
まとめ(修正すべきポイント)
京都生活実態調査の総括を一通り読んだ結果、私なりに修正すべき費用があると思われるところをチェックし、よりリアルな実生活を元にした月額の必要費用を算出します。
- A-1.食費:112,881円 → 50,000円に修正
- A-2.住居費:63,542円 → 89,000円に修正
- A-7.交通・通信費:53,185円 → 70,000円に修正
- C.予備費:38,100円 → 0円に修正
上記の修正を考慮した結果、月々の生活費用は428,205円となりました。
感想:賃金底上げ以前に税負担を軽減すべき
今回の調査は決して贅沢な生活をすごすための必要生活費ではなく、「ごく普通の生活」に必要なリアルな生活費であるということがわかりました。
私個人の修正を加えても、月々428,205円が最低限必要である結果となったため、京都総評が報告した結果は決して非現実的な金額ではないことを理解しました。
住居費と交通・通信費(車維持費)が家計を圧迫している事がわかります。
しかし、それ以上に非消費支出に該当する税金関係が大きな負担になっているのではないでしょうか。
この結果を見て、最低賃金を上げなければならないというのはやや的外れであるとも思われます。
その理由は、給与が増えればその分非消費支出も増えるため、抜本的な解決にはならないからです。
車の維持費についても自動車税の負担がありますよね。
さらには生活に必要な消費支出の10%は消費税となります。
調査結果の消費支出(+予備費)から消費税10%を取り除けば41,917円、自動車税を取り除けば3,6000円(1500ccの場合)、計77,917円の余裕が出てくることになります。
さらに言えば社会保障費の年金、健康保険費がかなり高額との印象も受けます。
今回の報告書からもわかる通り、30代ですでに一般世帯の家計は崩壊しています。
にも拘らず、老後もらえない可能性の高い年金に375,150円、高齢者医療のためといっても過言ではない健康保険料に205,410円も支払わなければならない現状は改善すべきではないでしょうか。
世間一般的な風潮としては、賃金の底上げをすべきとも声が大きいですが、その前に税負担を軽くしなければ根本的な解決にはならいないと考えるべきではないでしょうか。