将来の不安なしに博士課程に進学する学生はいないでしょう。
博士課程に進学する、そして研究者を目指すということは、リスクを背負う選択になることは間違いありません。
しかし、人生の選択は常にリスクを伴うものです。
そのため、「リスクを受け入れるだけの価値がその選択にあるかどうか」を見極めることが大切です。
つまり「高学歴ワーキングプアに陥るリスクを背負ってでも、あなたの人生において研究者を目指すことに価値はあるのか」ということですね。
- 大学院卒なのに高学歴ワーキングプアに陥る博士の特徴
- 高学歴ワーキングプアに陥る人は『鬱』を発症している可能性がある
- 研究者を目指すなら二足の草鞋を履くべき
結論、あなたの不安は現実になる可能性は十分にあります。
つまり、博士課程へ進学する人にとって、高学歴ワーキングプアはけして他人事ではありません。
目次
大学院卒なのに高学歴ワーキングプアに陥る博士の特徴
結論からいうと、『運』が悪かった、もしくは『神経質な性格』のためそもそも研究者に向いていなかった、このどちらかでしょう。
高学歴ワーキングプアに陥りやすい博士の特徴
- 運が悪い
→ 所属する研究室、指導教授、時期の問題 - 神経質な性格
→ そもそも研究者に向いていない
もちろん、博士本人の能力、努力は必要です。
しかし、それ以上に『運』の要素と、本人が研究者という職業に向いているか、という『性格』の問題に大きく左右されます。
この2つの特徴について、私の経験を交えて解説します。
高学歴ワーキングプアに陥りやすい博士の特徴①
運が悪い
誤解を恐れずに言うと、研究者として研究を続けていけるか(職に就けるか)は、『運』によって決まってしまうと言っても過言ではありません。
どんなに優秀な博士でも『運』がなけえば良い研究もできないし、ポストを得ることもできません。
逆に、この人が!?っていうくらいポンコツな博士でも、『運』が良ければ学振だって通るし、ポスドクにだって推薦してもらえます。
『運』という要素を深掘りすると、さらに3つの要素に分けられます。
- 研究分野
→ 研究業界的に規模が小さい
→ ポスドクの受け入れ先がない - タイミング
→ 研究費が確保されていない
→ ポスドクを雇うお金がない - 指導教官の人脈
→ 所属する研究室以外との接点が少ない
→ 機会損失が大きく、チャンスを得られない…
例えば、ポスドクになるためには「大学or研究機関の研究室が運営する研究プロジェクトにポスドクを採用するための予算が確保できている」ことが必要になります。
つまり、予算がなければポスドクを採用することはできません。
この予算は、研究費(科研費)という形で、研究プロジェクトを運営する研究グループがプロジェクト運営のための研究費を集めている必要があります。
予算の有無は時期により大きく左右される問題で、「去年だったらポスドクを雇用できたのに…」っという状況も珍しくありません。
要するに“学振”ってやつです。
学振に途切れることなく採用され続けることができれば、高学歴ワーキングプアに陥る心配をする必要なく、研究を続けることができます。
ただし、これにも『運』の要素が絡んでいることは確かです…。
学振に採用されるためには過去の実績が重要になります。
その実績を作れるかどうかは、大学院時代の『指導教官』と『先行する研究分野』によって大きく左右されます。

要するに、研究者を続けていけるかどうかは、大学院へ進学した時の研究室の環境によってほぼ決まってしまう、といっても過言ではありません。
高学歴ワーキングプアに陥りやすい博士の特徴②
神経質な性格
研究者は細かいことに注視するくらい神経質な方がいいんじゃない??っと思うかもしれませんが、実際はそうではないというのが私の実体験に基づく意見です。
みなさんが思う研究者のイメージってどういう感じでしょうか??
実際、博士に進む学生や研究者って、いわゆる「KW」と呼ばれる人たちが多いです。
※偏見も入っていますが、これはほぼ事実です。
そうした人達が同僚にいたり、先輩や後輩にいる環境で上手く立ち回るためには自分自身もKWにならなければ、かなり辛い状況に陥ります。
※人間関係でめちゃめちゃ苦労します。
若手研究員は将来の不安はもちろん、経済的に困窮状態になっている人も珍しくありません。
その上、研究成果(論文)を出さないといけない…というプレッシャーもあります。
こうした状況の中で、さらに人間関係にも苦労するとなれば、普通の人なら精神的に病んでいくのは当然です…。
つまり、神経質な性格の人は研究を続けていくための精神状況を維持することができずに『鬱』状態に陥り、結果的に研究を辞めていく…ということも珍しくありません。
無神経な人は研究者に向いている。
そもそも、無神経な人って将来の不安とか気にすることもないし、自分自身と周りの人との比較をすることもなく我が道を行くタイプの人なので、研究者として最強ですよね。(笑)
研究者を目指すなら二足の草鞋を履くべき
高学歴ワーキングプアを不安視する根本的な問題は、経済的な不安によるところが大きいでしょう。
極端な話ですが、貯金1億円あれば、博士課程に進学した後に就職できるかどうかを心配することなどありませんよね。(笑)
つまり、経済的な安定が得られるかどうかが高学歴ワーキングプアの根幹にあるのは明らかです。
1臆円あれば問題は解決しますが、それは無理ですよね。
では、そうすべきか。
答えは簡単で、研究職に依存しない経済的に自立した収入源を確保できればOKです。
博士時代に経済的に自立した収入源を確保する。
つまり、副業 or フリーランスとして独立しておくことが、研究者として研究を続けていくための戦略となります。

すみません。。
私自身が理系出身のため、文系の博士事情を把握していませんので、上記ページは理系学生へのアドバイスになっています…。
最後に
高学歴ワーキングプアって、結局のところ『鬱』になっている状態とほぼ同義だと思います。
「研究職」にこだわらなければ、就職できないことはないし、仕事がないわけではありません。
しかし、ずっと研究を続けてきたために他の進路を選ぶことができず、「自ら就職難に陥ってしまったと思い込み、ふさぎ込んで引きこもってしまう」っといったサイクルに陥ることは珍しいことではありません。
これが高学歴ワーキングプアの現実でしょう。
これから博士課程に進学する人、研究者を目指す人は、高学歴ワーキングプアに陥る前に、経済的に自立した収入源を作っておくことをおススメします。
経済的な安定なくして、精神的に安定することなどできません。
そして、精神的な安定なしに研究を続けることがほぼ不可能です。
博士に進学する人、研究者を目指す人にとって、高学歴ワーキングプアはけして他人事ではありません。
仮に博士で学位取得後にポスドクのポストに就けても、若手研究員は経済的には恵まれることはありません…。

どちらにせよ、研究を続けていくのであれば、研究を通して培ったスキルを活かしてフリーランスとして活動しておくことは重要になります。
これが元ポスドクからのアドバイスです。
がんばってください。