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【博士が100人いる村】デマ!? 物理系の元理系女PDが実体験を含めて考察

【博士が100人いる村】最新情報(平成30年度)と元理系女PDの実体験を元に考察
YouTubeで「博士が100人いる村」という恐ろしい動画を見てしまいました。これって本当なんでしょうか??

大学院生、さらには博士の学生であれば知らない人はいないであろうこの創作物語。

製作者が不明という点が不気味ですが、実はちゃんとした根拠となるデータに基ずく内容であると言われており、その基となるデータが文部科学省が公表している「学校基本調査」です。

そして、この動画の中で最も気になる問題は、「100人の博士のうち8人は行方不明or死亡」とされているところですね。

ネット上では”デマ”という意見もありますが、あながち嘘ではないのでは??というのが、博士を経験しその後PDのポストに就いた私の意見です。。

ただし、正規雇用 or 非正規雇用の割合でなく、より具体的なポスドクや会社、他分野へ就職した割合をどのように調査できたのか、という点については疑問が残るため信ぴょう性に欠ける部分があるのは確かです。

さらには、行方不明or死亡と言うのはちょっと言い過ぎで、単純に連絡が取れない or 博士後の進路を確認できない、というのが正しいのかもしれません。

※「博士は就職できない」は嘘です。
博士課程修了者の就職率は平成31年度において69%です(学部卒業者の就職率は78%)。学部と比べれば少し低い就職率ではありますが「就職できない」というのは世間に浸透した誤解です。就職活動をした多くの博士課程修了者はちゃんと就職しています。
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【博士が100人いる村】はデマ!? or 真実!?

博士の進路学校基本調査とは、文部科学省が毎年実施している進路調査です(→ こちらにリンクを載せておきます)。

文部科学省は,学校教育行政に必要な学校に関する基本的事項を明らかにすることを
目的として,標記調査を昭和23年度より毎年実施しています。

現在(2020年8月)の最新版は、「令和元年度学校基本調査」になります。

では、学校基本調査で報告されている“博士たち”の進路についてチェックしてみましょう。

令和元年度の博士課程修了者の進路

博士修了者の就職率は69%

なんと、令和元年度の博士の就職率は過去最高となっています。

令和元年度(平成31年3月)の博士課程修了者数は15,578人であり、その69%にあたる10,756人が正規雇用の職に就いています。

博士課程修了者には満期退学者(学位を取得しない単位修得者)数も含まれています。

「博士課程まで行くと就職できない…」という噂を聞いたことがあるかもしれませんが、これは明らかな”嘘”と言わざるを得ませんね。

また、これまでの過去の学校基本調査を見る限り、過去も現在も博士課程修了者に占める就職者の割合はほとんど変わっていないことが確認できます。

博士課程修了者のその後の進路引用元:令和元年度学校基本調査

では、無事に就職した博士たち以外の残りの31%はどうなったのでしょうか。

こちらも「令和30年度学校基本調査」によると、1.3%がさらに進学し、5.4%が一時的な仕事に就き、残りの17.3が進学も就職もしていない者(無職?)と報告されています。

博士の進路:7%引用元:令和元年度学校基本調査
え?? 表の数字を全部足すと93%にしかならないんですけど…。

おや?

残りの7%についての報告がありません…。

実は、過去の調査報告を遡ってチェックしてみても、毎年博士課程修了者のうち7~8%くらいが学校基本調査の中で報告されていないのです。。

これが、「博士が100人いる村」の中で問題視される8%の博士たちです。

7%の博士たちは何処へ…

おそらく、大学側は博士課程修了者の進路をチェックしているはずですが、進路調査をしても博士(学生)からの返答がない、連絡が取れなくなったなどの理由により、学校基本調査に含まれていないだけではないかと思われます。

つまり、大学側が把握できずに「行方不明」になっているだけであり、それは死亡(自殺)したわけではない、というのが事実かもしれません。

しかし、実際に自殺をしたという例を私自身聞いたことがあるのは確かです(私の直接の知り合いではないため、詳細は不明ですが…)。

また、博士の方で”鬱”になるケースも少なくありません。

これは大学院博士課程を経験した方の多くは心当たりがあるのではないでしょうか。

「博士課程の学生が急に大学へ来なくなり連絡が取れらくなった」っという例は少なくなりません。。

私も似たような状況になっていた時期がありましたし、実際にそうなった先輩や後輩もいました。

こうした現場を見ているからこそ、「100人が博士の村」の中で語られる「8%が行方不明 or 死亡」という説を否定できない理由です。。

日本の自殺者数は20,000人以上(2019年)

日本の年間自殺者数データ引用元:警察庁自殺統計原票データ

こちらは、2010年から2019年の年間自殺者数を年齢階級別に表記したグラフです。

グラフを見てわかる通り、自殺者数は年々減少傾向にあり、2019年は20,169人という集計データが報告されています。

減少傾向とは言え、年間の自殺者数は2万人を超えています。。

自殺者数は経済ショックが起きた翌年に急増すると言われており、その後10数年かけて減少傾向を示す特徴があるようです。

さて、「博士が100人いる村」に話を少し戻してみますね。

先ほどの「令和元年度学校基本調査」によると、平成31年3月の博士課程修了者数は15,578人と報告されています。

そのうち、7%が調査結果に載らない「行方不明者 or 死亡」に当たります。

→ 15,578人 × 7% = 1,090人

もし、「博士が100人いる村」の動画の内容が真実であれば、年間1,000人以上の方が自殺していることになります。

しかし、上のグラフの博士課程修了者の年齢層:28歳~30歳にあたる年齢階級の死者数と比較するとどうでしょうか。

博士課程修了者の割合はざっくり各年齢人口数の0.3%以下だと推測されます。

つまり、警察庁の自殺者数のデータと照らし合わせて考えれば、学校基本調査に載らない7%が自殺しているという可能性はまったく考えられません。

やっぱりデマだったんですね。ホッとしました。

ただし、自殺まではいかないにしても、精神的に病んでいる方が多い可能性があることは実体験から想像できることです。

「博士が100人いる村」で語られる最後のオチは信ぴょう性がないデマであっても、博士課程に在籍する学生の不安を具体的に捉えている動画であることは間違いありません。

それゆえに、製作者不明にもかかわらず製作後何年たっても大学院生の間で話題になているのでしょう。

まとめ:博士課程修了者の8%は自殺していない

年齢階級別の自殺者数と照らし合わせて「博士がいる100人の村」の真実を考察してみても、この動画がまったくのデタラメであるとは完全に否定できない気持ちが残ります。

それは、私自身が博士課程を経験し、その過程で苦しんだり、時には”鬱”状態を彷徨った時期があるからであり、まったくの他人事として考えられないからです。

博士経験者であれば、多くの人は共感する部分があるのではないでしょうか。

ただし、”自殺”というの事実はないにしても「学校基本調査」で集計きていない7~8%が存在していることは事実です。

とは言うものの、博士課程修了者の就職率は69%であり、さらに言えば就職しなくても自身で事業を立ち上げたり、フリーランスとして活躍する手段はいくらでも考えられます。

学校基本調査の項目には「起業」というカテゴリーがありませんよね??

つまり、「行方不明者・死亡」とされる7~8%は起業している可能性も考えられるため、「博士がいる100人の村」の主張をそのまま受け止めて悲観する必要などまったくありません。

むしろ、こんなことに不安を掻き立てられている様では、そもそも研究者には向かない性格かもしれません。。

※「博士は就職できない」は嘘です。
博士課程修了者の就職率は平成31年度において69%です(学部卒業者の就職率は78%)。学部と比べれば少し低い就職率ではありますが「就職できない」というのは世間に浸透した誤解です。就職活動をした多くの博士課程修了者はちゃんと就職しています。
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