これから大学院へ進学しようとする理系の大学生、もしくは現在大学院修士課程にる大学院生に質問です。
- 専門性的な知識を身に着けたい
- 就職に有利になりたい。
- 大学院卒ってカッコいい。
結論から言うと、大学院へ進学する83%の学生が”価値のない進学”をしています。
言い換えると、大学院進学者の83%の学生は無駄な時間と学費を消費しているということ。
本記事が、これから大学院進学を考えている学生、もしくは現在修士課程に在学中の学生は、自分の考えている大学院進学の目的が果たせるかどうかを、見直すきっかけになればいいと思います。
※大学院へ進学しないほうが良いと言っているわけではありません。目的を明確にして!と伝えたいんです。
- 大学院は博士課程まで進まなければ意味がない。
- 大学院へ進学する83%の学生が誤解していること。
- 大学院に進学したらやるべきこと5選!!
これから大学院へ進学しようと考えている学生、もしくは、現在修士課程に在学中の学生の方でも読んで損はないと思います。
ちなみに、私は理系女のポスドクとして大学で研究職についていた経験があるため、大学院事情には詳しいです。
※そこらのアカ〇クなどの薄っぺらい大学院に関する情報とはまったく別ものです。
☑ 学部4年+大学院5年で物理学博士号を取得
☑ 某大学の研究機関でPDとして勤務(5年任期)
☑ PDの給料は360万円(年収)
では、早速解説していきましょう。
目次
大学院は博士課程まで進学しなければ意味がない
あなたも例外ではありません。ほとんどの大学生、大学院生が誤解しています。
それは『大学院は研究者になるため(目指すため)の研究機関であり、教育機関ではない』ということ。
これを理解してください。大学院はこれまでの高校、大学のような教育機関ではありません。研究機関です。
※勉強しているだけでは大学院にいる意味がありません。
これだけを聞いて“腑に落ちない”という人はこちらのページ:大学院のメリットとデメリットで詳しくまとめていますので、参考にしてみてください。
さて、これを理解した上で大学院へ進学する目的を考えれば、自ずと以下2つのいずれか(もしくは両方)に当てはまるはずです。
大学院へ進学する目的は2つ
- 研究者になる・研究者を目指す。
- 大学院をビジネス的戦略で利用する。
忘れないでくださいね、大学院は研究機関です。
つまり「研究者を目指さない」 or「 博士課程に進学せずに修士課程で卒業するつもり」なら、大学院へ進学する意味・価値はゼロです。
綺麗事は言いません。マジで価値ゼロです。
それくらいなら大卒で就職していち早く社会に出た方がメリットははるかに大きい。
※修士で卒業する学生は学費を払ってくれるだけの大学の養分です。。
ただし、博士課程までいくと最短でも5年、卒業が27歳になりますね。研究者になりたいと思っていても、そう簡単に決断できることではありません。
「研究者を目指したいけど、これから5年間を大学院に通う決心がつかない…」と言う人は大学院進学前に聞きたかった5つのアドバイスを参考にどうぞ。
さて、もう一つの進学の理由について。
あなたのキャリアアップのために“大学院を利用する”という“目的達成のための手段”として進学することはとても価値が高いと思います。
これはビジネス的な戦略に基ずく進学という選択であり、大学院へ進学することがキャリアのためのレバレッジになることが前提です。
つまり、“具体的な実益”がなければ戦略的とは言えません。
では、ビジネス的な戦略、具体的な実益とはどういう思考なのか。研究者を目指す以外で大学院進学を『起業』するための手段とすることが1つのアイディアとして考えられます。
特に、理系大学院生ならフリーランスでエンジニアを目指すこともできるし、研究者を目指すのであれば、なおさらフリーランスとして地盤を固めておく必要があると思います。

もちろん、これがすべてではありません。アイディアは人の数だけ出てくるはずです。
つまり、自分で自分自身の将来性を考えて計画的に大学院を目的達成のための手段として利用しなければ、進学する価値はありません。
しかし、多くの学生は「大学院にいけば専門的な知識が身に付く」などという、大学側のPR宣伝を信じてそれを当たり前の様に受け止めています。
これは大学運営側の営業トークです。本当に学費を払うだけの価値があるのかをあなた自身で考えてみてください。
結論、修士卒に価値はありません。
大学院へ進学する83%の学生が誤解していること【修士卒に価値はない】
文部科学省が公表している「平成30年度学校基本調査」を参考にすると、大学院修士課程への進学者のうち、博士課程へ進学する割合は全体の17%だけです(理系の場合)。
超重要なことなので何度も繰り返し伝えますが、研究者を目指さなければ大学院へ進学する意味はありません。
それにもかかわらず、83%は修士課程で卒業していきます。
つまり、83%もの学生が大学院へ進学する本来の目的を持つことなく、進学し卒業しているのが現状です。
「何を目的にするか、何を価値と考えるかは本人の問題」と思う人もいるかもしれませんね。あえて厳しいことを言うと、大学院と言うシステムをまったく理解していない愚かな学生です。
※大学側にとっては良いカモ学生です。。
以下のことを進学の目的・理由にして、社会に出たくない自分を納得させている(甘やかしている)のではないでしょうか。
修士卒の学生が誤解してること
- 大学院では専門的な知識が身に付く
→ そんなわけない… - 院卒は就職に有利・給料が良い
→ 学歴ではなくあなた自身の価値の問題 - 理系は院卒だとカッコが良い
→ ちっちゃな自尊心でしかない
もし、このように思って大学院へ進学しようとしているなら、ちょっとマズいですよ…。
大切なことなので何度でも繰り返しますが、大学院への進学目的は「研究者になる」もしくは「戦略的に目的達成のための手段として利用する」以外にありません。
上記3つを冷静に考えてみてください。「目的達成のための手段に当てはまるじゃないか」と思うかもしれませんが、もう少し振り下げて考えてください。
あなたが思う「大学院へ進学する目的」は、社会に出たくない自分を納得させるための言い訳になっていませんか?
あなたの誤解していること①
専門的な知識が身に付く
修士卒で専門性が身に付くと本気で思っていますが?就職活動や単位取得のための講義などを除くと、実質研究に当てる時間は約1年間のみです。
研究者は長年かけて1つの研究テーマに挑んでいます。そのキャリアを軽視し過ぎです。もちろん、大学院で知識は勉強できるかもしれませんが、それが身に付くかは別問題です。
専門的な知識とは、研究実績・年数に比例にて実体験ベースで身に付いていくものです。だからこそ価値があります。
※教科書レベルで勉強して得られる頭でっかちな知識に価値はありません。
「専門性が高められる」といったPRはよく聞きますよね?
これは営業トークです。大学運営側の学生に対する大学院への呼び込みです。
大学院への入学者数が多ければ学費収益が上がり、進学率が高めれば文部科学省に評価されて補助金をもらいやすい、という大学側のメリットがあるためです。
あなたが誤解していること②
就職に有利・給料が高い
初任給だけ見れば、確かに院卒の学歴がある方が2万円ほど高く設定されていることがあります。
しかし、修士卒の肩書を取るほど2万円の価値があると思いますか?
例えば、修士課程2年間の学費だけを考えても5年~10年かけて回収できる程度だし、もし少しでも高い給料を目指すのであれば、修士卒ではなく、業種を選んだ方が効率がいいはずです。

上の表は、厚生労働省が調査した主な産業別の男女平均賃金を表したグラフです。この結果から見れば、業種によって収入の差がかなり大きいことがわかりますね。
上のグラフを見てわかる通り、待遇(給料)は業種によって大きく異なります。
もし好待遇を求めるのであれば、修士卒という肩書ではなく業種を選定して就活する方が目的に合った選択と言えるでしょう。
あなたが誤解していること③
理系は院卒だとカッコが良い
もはら論じる必要性もないかと。。
ただし、このように思っている人は実際多いのが事実。
しかし、博士に進学した側、もしくは研究者から見れば、修士卒業生は学部卒業生より優れているかと言えばそうとは言えない…。
あえて言うならパワーポイントの使い方がちょっとだけ上手になった程度。
これはバカにしているわけではなく、修士課程の2年間(実質1年間しかない)しかない短い期間で実績を出すのは、カリキュラム的に無理があります。
そんな短期間で研究などできないし、何の成果も出せません。
そうした大学院事情を知っている側からすれば「修士卒も学部卒も違いはないよね」って思って当然です。。
決して大学院への進学に否定的な意見を持っているわけではありません。「修士卒するなら大学院へ進学する価値はない」ことを伝えたいのです。
こちらのページ:大学院のメリットとデメリットで博士課程まで進学する価値を詳しく解説していますので参考にしてみてください。
大学院に進学したらやるべきこと5選!!
大学院への進学は“目的達成のための過程”であり“手段”にすぎません。そのため、何の計画もなく進学することなど、本来あり得ないことです。
私は大学院進学へ否定的な意見を持っているわけではありません。
「修士卒なら価値はない」「大学は研究者になるための機関」であることを伝えたいだけです。これを知らずに無意味な進学で時間とお金を無駄にしてきている学生をたくさん見てきましたので….。
以下が私からのアドバイスです。
大学院進学者へのアドバイス
- 大学院は博士課程まで進学し学位を取得する事を前提とせよ
- 大学院生活が始まる前に学会・研究会への参加意思を指導教員に伝えよ
- 大学院生活が始まる前に学振への申請を希望する事を指導教員に伝えよ
- 日本学生支援機構の第一種奨学金を借入せよ
- 研究活動の傍ら収益性の期待できるスキルを身に着け、実行せよ
詳細についてはこちらのページ:大学院進学前に聞きたかった5つのアドバイスで深掘りして解説しています。
ここでは、④と⑤についてちょっとだけ触れさせてください。
つまり、大学院博士課程で貸与する第一種奨学金が免除される制度です(詳細はこちら)。
もしかしたらあまり知られていない制度?かもしれませんが、高い確率で奨学金の全額免除もしくは半額免除が適応される制度です。
※私は半額免除が適応されたため、220万円ほどが返済不要になりました。
つまり、“借りておかなければ損”ってことです。
さらに、第一種は無利息なので借入した奨学金を投資に回すことで若い時期からの資産形成も可能になります。
投資資金、積立資金を無利息で獲得できるのは学生の特権です。それを利用しない理由はありません。
≫【朗報】大学生は奨学金を投資に回せ!! 20年後には1,000万円以上の資産になる
そしてもう1つ。
例えば、プログラミングスキル。理系の学生なら必須と言っても過言ではありません。
大学院や研究とは関係なく、趣味でプログラミングを独学している学生も珍しくないですよね。一方で、プログラミングは苦手だ…と言う人もいます(私がそうでした…)。
しかし、大学院の頃にプログラミングを勉強しておくことをおススメします。
その理由は、研究を進めるためにも必須になる他、プログラミングスキルがあれば『起業』することは比較的容易だからです。
つまり、研究者を目指しながら“経済的に自立する選択肢が持てる”ということ。
要するに、研究を続けながら『学生起業』してフリーランス活動しておこう!!ってことです。
難しそうに聞こえるかもしれませんが、プログラミングスキルがちょっとあれば、Webエンジニアとしてフリーで仕事をできる時代です。以下のページを参考にしてみてください。

これからの時代を生き抜くためには、こうした多様性のある考え方を持っていなければ苦しいですよ。
とは言っても、例えばポスドクをしながら研究で培ったスキルを使って副業している研究者は珍しくありません。
私も、教授の知り合いから、3DCADの使ったモデリングや図面製作の仕事を単発的に請け負ったりしていましたので。
特に学生という立場なら、手をかけて面倒を見てくれるケースも少なくありませんので、そうした機会を逃さぬようにアンテナを張っておくことは重要です。
最後に:大学院へ進学するなら博士課程まで行かなければ価値はない
誤解しないでください。
私は大学院進学を否定的に考えているわけではなく、修士卒なら大学院にいく価値はないと伝えたいのです。
私自身、大学院5年間で貴重な経験を積みことができ、博士3年目で学位取得、その後は某大学の研究員(ポスドク)になることができました。
大学院へ進学するなら、ぜひ研究者を目指してください。
本記事のまとめ
- 大学院は教育機関ではなく研究機関。
- 83%の人が大学院に間違った目的を持って進学している。
- 大学院進学の目的は「研究者になる」「戦略的に目的達成のための手段として利用する」以外にない。
以上です。
大学院は目的達成のための道具のようなものです。
考え方・使い方次第で大学院進学の価値は想像以上に膨らんでいきます。そのためにも、目的を見据えた戦略的なプランが必要です。
それがない、もしくは考えきれないっと言うのであれば、あなたにとって大学院進学の価値はないはず。
本記事が、これから大学院への進学が考えている大学生、もしくはすでに大学院に在籍している院生に役立つてば幸いです。
では。